アルツハイマーよもやま話ー研究者・医師のブログ

認知症研究者・医師のブログです。

2019-01-01から1年間の記事一覧

ドネペジルの効果の個人差  

認知症の診療をしていて、アルツハイマー型と思われる人に、ドネペジル(アリセプト)を処方することは多い。しかし効果が感じられる人と全く感じられない人がいるというのが、実際ではなかろうか。効果がないということと維持できているということの見極め…

アデュカヌマブについての感想

10月のおわりごろのニュースで、来年米国FDAにアデュカヌマブの認可申請がなされるとのことが伝えられ、エーザイとバイオジェンの株価が跳ね上がったそうだ。一度治験が中止になったのに、一体どういうことなのか、と疑問に思う人は多いし、私もその一人…

テレビで放映される認知症予防法の問題

最近、認知症予防に効果ありというようなものがテレビで放映されることがかなりある。しかし、その根拠というのは、マウスの実験だったり、細胞レベルの実験だったりということがほとんどである。マウスで効果があるということが、ヒトのアルツハイマーとか…

アメリカの地域差 

私はアメリカ東海岸のボストンで2年半暮らした。ボストンはハーバード大学があって、学園都市でもあり、白人が多い町だ。東海岸の中でも品のよい街ではなかろうか。治安もとてもよいので、一人暮らしも安心であった。ただ地下鉄のオレンジライン沿いは危険…

論文作成と英語

研究がまとまったら論文を英語で書いて、国際学術誌に掲載されるところがゴールになる。しかし、しっかりした英語の論文を書くのはかなり至難の業である。私の場合は、英語については留学である程度修行を積んだから要領はつかめている。そうはいっても論文…

非現実的なアルツハイマー病の点滴薬

アルツハイマー病の抗体医薬としてアデュカヌマブなどが開発されて治験がなされた。まだBAN2401など治験が行われているものがあるということだ。これらのアミロイドβを標的としたもの以外にもタウの抗体医薬も開発されている。しかし、アルツハイマーのよう…

推薦できる認知症専門クリニック

東京圏内の認知症クリニックでおすすめできるところといえば、やはりこちらだろう。「医療法人社団創知会」 院長の朝田医師は、以前筑波大学の教授をされていた方で、認知症の臨床のスペシャリストといえる。このクリニックにはデイケア施設も併設されていて…

βセクレターゼ阻害薬の行方

アルツハイマー病の根本治療薬の候補として期待されていたβセクレターゼ阻害薬の治験が中止されたというニュースは衝撃的だった。なぜなら、今回中止になったエレンベセスタットというエーザイとバイオジェンが共同開発した薬は、治験の最終段階まで進んだ数…

運動と認知症予防

WHOの認知症予防ガイドラインが今年発表された。その中でだれもがもっともてっとり早くできるのは、エクササイズ(特に有酸素運動)だという気がする。運動にもいろいろあるが、やはりジョギングか早歩きがやりやすいだろう。私も時々ジョギングするようにし…

ブログタイトルの変更

このたびタイトルを「研究小僧の思い」から 「アルツハイマーよもやま話」に変更することにしました。 より多くの人に読んでもらえると嬉しいです。

K先生の回診

研修医1年目の教授回診では、たいへん緊張したのを覚えている。当時は、病床数は多くなく、10人くらい同学年の同僚がいたから、受け持ち患者は一人か二人だったのだが、かなりの重症患者をみなければならないこともあった。一人の患者さんについて、調べた…

認知症の診療と研究の接点

日々の臨床あるいは診療の仕事の上で、研究との接点というものを持つ機会はあるものだと思う。新しい病気などの臨床上の発見が、鋭い臨床医の観察力からはじまることが多いということはよく知られている。私は今はクリニックで診療しているから、あまり臨床…

留学体験 その4

米国留学中の難題といえば、英語と食事である。英会話の方は、大学のESSと、その後大学院時代の個人レッスンなどでトレーニングをしていたので、それほど不安はなかった。だが、渡米直後は、自分の言うことが今一つ通じていないという感じがしていた。し…

留学体験 その3

留学中、MITの研究室では、学部の大学生(3年生)を受け入れて、本格的な研究の補助をしてもらっていた。私もしばらくしてウェルズリーカレッジから通ってきていた女子学生を指導することになった。彼女はフロリダ出身のブロンド髪の長身で、明るい子であっ…

留学体験 その2

私がボストンに留学したころは、アルツハイマー病の研究は世界的にみても、やっと家族性の病気の遺伝子がわかりはじめた時期で、研究者の間にはなんとなく熱気が感じられた。私の研究室のボスはあまり流行には乗らずに自分のやりたいことをやるというタイプ…

留学体験ーその1

私は、日本で3年間ポスドクとして研究をしてから、アメリカ東海岸のMITに留学した。この時36才で、やる気もあったので、独り身もあまり気にならなかった。4月の半ばくらいにボストンについて、前もってきめてあったアパートに入居したのだが、ベッドフレー…

認知症薬の治験中止のニュースを聞いて

何ヶ月か前に、アルツハイマー型認知症の治療薬として開発されて効果があるのではと思われていた注射薬アデュカヌマブの治験が中止になったというニュースが話題になった。日本を含め欧米豪アジアで大規模な治験が行われていたというが、結局効果がないとい…

憧れと現実のはざまでーインパクトファクターの弊害

研究には理想と現実のギャップがつきものだ。なんとか質の高い研究をしたいと思ってもできることには限界があることが多い。このようなギャップに悩みながら、研究を続けてきたというのが本音だ。たとえばインパクトファクター(IF)ということが研究の世界…

研究の一歩を踏み出した大学院時代

自分が研究をはじめたきっかけは大学院だった。当時は今のような研修制度というものはなかったから、大学院に卒後3年くらいで入る人が多かった。私も3年間の病院での臨床研修の後で母校の大学院に入った。その時K教授は退官してしまっていたので、一抹の寂…

K先生との出会い

私は大学医学部の最終学年の時に、そろそろ進路を決めねばならないと考えて、二つの進路から選ぼうと思った。一つは脳神経内科で、もう一つは内科である。当時内科には第1,2,3と呼吸器があったと思う。いろいろ考えた末神経内科を選んだ。自分は比較的狭い分…

ブログ開設にあたり

私はこれまで認知症の研究を長い年月行ってきました。最後の20年くらいは小さな研究室で少人数の研究員、大学院生、研究助手らといっしょに、研究を続けてきましたが、その研究も一段落し、その研究室には別れをつげることになりました。これからは少し自…