アルツハイマーよもやま話ー研究者・医師のブログ

認知症研究者・医師のブログです。

認知症の告知の難しさについて

新患の患者さんが認知症と診断された時に、ご本人へどう説明するかということはいろいろ複雑な問題をはらんでいます。

この時にご本人にどういう説明をするのがよいのかについて、まだ専門家の間でも結論が出ていないように感じます。

あまりはっきりと告知してしまうことで、抑うつなどの悪影響がでることもありえます。しかし、問題があるのに、それを言わずにあいまいのままにしておくのも、患者さんの治療へ向かおうという気持ちが起こらないために、それも好ましくはありません。

私は多くの場合、ある程度は「認知機能に問題があります」ということを言うようにしています。そして、その原因としてどういうことが考えられるのか、どう対処すればよいのかについて、できるだけわかりやすく説明をします。

軽症の人には、「認知症」という言葉はなるべく使わないようにするか、「疑い」というぼかし方をするというのが実情ですが、やはりケースバイケースということになります。

以前、軽度認知障害という診断をはっきりと述べた患者さんが、障害という言葉を聞いて傷ついてしまったということがあり、それからはMCIか軽度認知異常を使うようになりました。

この告知の問題は、悩ましい問題なのですが、認知症薬を使う場合は、「認知症」という直接的な言葉は避けながらも、ある程度はっきり言う方が良いように感じています。