アルツハイマーよもやま話ー研究者・医師のブログ

認知症研究者・医師のブログです。

βセクレターゼ阻害薬の行方

アルツハイマー病の根本治療薬の候補として期待されていたβセクレターゼ阻害薬の治験が中止されたというニュースは衝撃的だった。なぜなら、今回中止になったエレンベセスタットというエーザイとバイオジェンが共同開発した薬は、治験の最終段階まで進んだ数種類のβセクレターゼ阻害薬のうちで、最後まで残っていたものだからである。(すでにいくつかの候補が中止に追い込まれてしまっていて)いわば最後の砦だったのだが、それがつぶれてしまった形となった。私個人は、βセクレターゼをブロックしてアミロイドβの産生をおさえる治療法は有望かもしれないと思っていたのだが、話はそう簡単ではないようだ。この失敗でアミロイド仮説がゆらぐという意見もあるらしいが、私はそういうことではないと思う。むしろ、アミロイドβが溜まってしまってから、その産生をおさえても手遅れということではないかという気がする。今は治療開発の転換点なのかもしれない。