アルツハイマーよもやま話ー研究者・医師のブログ

認知症研究者・医師のブログです。

留学体験ーその1

私は、日本で3年間ポスドクとして研究をしてから、アメリ東海岸のMITに留学した。この時36才で、やる気もあったので、独り身もあまり気にならなかった。4月の半ばくらいにボストンについて、前もってきめてあったアパートに入居したのだが、ベッドフレームもなく、マット1枚からのスタートだった。がらんとした部屋に一人でいると寒々しい気分になった。そこはハーバードスクエアよりもMITからは離れているポータースクエアという駅の近くで、住宅地だったから町としても面白味にかけ、少し不便なところだった。そんなわけで、落ち着いてからしばらくして、ボストンの白人の多い地域で、観光地としても知られるビーコンヒルに引越をした。この引越では研究室のテクニシャンにたいへんお世話になった。

研究室のボスはW教授というユダヤ人で、神経化学の生化学的なことを得意としていた。私は、ここでは神経細胞のリン脂質代謝についての研究とアミロイド関係の仕事を掛け持ちでやっていた。研究室は割とこじんまりとしていて、W教授の指導はゆるやかだったので、仕事はやりやすかった。W教授は快活な人で、人をほめるのがとても上手だった。討議室の壁には過去の在籍者の写真がたくさん飾られていた。そこからの眺めはとてもよいもので、ボストンの街と澄んだ青空は今でも眼に浮かんでくる。その眺めを毎日見ながら、研究にいそしんでいたことを思い出す。