アルツハイマーよもやま話ー研究者・医師のブログ

認知症研究者・医師のブログです。

認知症

運動にはアルツハイマー病のタウの広がりを抑える効果がある

運動には認知症のリスクを低減する効果があり、一日の歩数が運動量の目安になるということが知られています。 しかし、運動とアルツハイマー病の脳に起こる病理学的な変化との関連性ははっきりしていませんでした。この問題について、米国でかなり大規模な研…

1日7千歩以上歩くと健康リスクがはっきり低下する

一日に何歩くらい歩けば認知症予防によいのかということは、これまでも研究がなされてきています。以前、姉妹ブログに、一日約1万歩の時にリスクが最小になるという研究について、紹介しました。https://yobounoizumi.hatenadiary.com/entry/34 さて、2025年…

レカネマブによる症候性ARIAの頻度は、軽度認知症よりもMCIで少ない

アルツハイマー病の新治療薬レカネマブの副作用として、脳内の浮腫ARIA-Eや出血ARIA-Hが起こるため、治療中には注意が必要です。 このARIA(アミロイド関連画像異常)の起こる頻度は、全体の2~3割程度と言われています。 レカネマブ治療の対象になるのは、…

前頭葉機能検査(FAB)の得点は認知症とMCIでどう違う?

前頭葉機能検査(Frontal Assessment Battery, FAB)は認知症や軽度認知障害(MCI)の診断や経過の評価のためによく使われている神経心理学的な検査です。 この検査は、短時間でできること、特別な用具を使わず、ベッドサイドでも行える簡便なものという長所…

レカネマブがオーストラリアで不承認にーEUと同様の判断

オーストラリアの薬事当局である医薬製品管理局TGAは、レカネマブを医薬品として承認しないと発表したということです。主な理由は、有効性が安全上のリスクを上回らないと判断したためということです。 やはり、ARIAが3割近くの患者に発現し、まれではあっ…

アルツハイマー病の睡眠障害の特徴とは

アルツハイマー病では、睡眠の障害が現れるということがよく言われています。では一体どういう異常があるのか、特に睡眠構築の観点からみた変化について、メタ解析をした論文を参考にして、まとめてみると、次のようになります。 まず総睡眠時間は、アルツハ…

英国では治療対象を限定してレカネマブを承認ー日米とは中身に違いがある

最近、英国でレカネマブが8月22日に承認されたと報道されていました。EUでは、不承認となったので、英国での承認は意外な感じがしました。 しかし、よく調べてみると、英国は、レカネマブをApoE4のホモ以外の患者への治療薬として承認しているのです。 エー…

ApoE4ホモの人で高いレカネマブのARIAリスクー海外では死亡例報告も

レカネマブ(商品名レケンビ)の副反応として脳血管性の浮腫や出血(ARIA)が大きなリスクとなることはよく知られています。そして、そのリスクはApoE4を二つ持つホモの人では、著しく高いことから、米国では、ApoE遺伝子検査を事前に行って、リスク評価を行…

レカネマブが欧州では不承認の結果にー注目される判断理由とは

この7月26日に、EUの欧州医薬品庁(EMA)は、医薬品の科学的評価を担当する委員会の協議をもとに、レカネマブの販売を承認しないことを勧告したと発表したというニュースがでていました。 この決定によって、レカネマブの承認は欧州では見送られることになり…

より良い認知症診療を受けるためセカンドオピニオンも

最近診療をしていて感じていることに、他の病院やクリニックにかかっている患者さんが、私の勤めているクリニックに相談に来ることが増えていることがあります。その理由としては、大病院では5分診療といわれるように診療時間が短く、きめ細かい診療を受けら…

レカネマブ使用前のApoE遺伝子型検査ーあまり知られていない日本国内の指針

前回と前々回に、レカネマブの副反応として重要なARIAの頻度が、ApoE遺伝子型によって異なることから、米国では、投与前にApoE遺伝子型検査をすべきということが定着しているのに、日本では、その点がうやむやなままになっているということを書きました。 実…

レカネマブ使用前のApoE遺伝子型検査に大きな日米差ー続報

前回の記事に書いた通り、レカネマブ(レケンビ)の投与前検査として、MRI、アミロイドPET(あるいは脳脊髄液検査)は全例に実施することになっています。しかし、ApoE遺伝子型検査は、アメリカでは実施すべきとなっているのに、日本では、そういう但し書き…

レカネマブ使用前のApoE遺伝子型検査ー注意喚起の仕方には日米で大きな差がある

アルツハイマー病の新薬 レカネマブが日本で承認され、臨床に使われるようになって、半年近くが経っています。レカネマブの副反応として多いものには、注入に伴ういろいろな反応、そしてARIA(アミロイド関連画像異常)という脳浮腫や微小出血があげられます…

レカネマブの維持投与法についての新たな動向

最近、アルツフォーラムというサイトに、レカネマブの維持投与療法についての新情報がでていました。 この維持療法は、初期アルツハイマー病の患者にレカネマブを導入して、アミロイドβプラークが排除された場合に、レカネマブを中止するのではなく、維持量…

ドナネマブの承認判断をFDAが延期した理由とは

今年3月のはじめに、イーライリリー社が開発中の、アルツハイマー病治療薬ドナネマブについて、米食品医薬品局(FDA)が承認可否の判断を延期し、外部の専門家からなる諮問委員会を開いて、安全性と有効性を検討する見通しだというニュースがありました。この…

認知機能テストMoCAの得点はMCI(軽度認知障害)と認知症でどう違う?

認知機能テストでもっともよく使われているのがMMSEというもので、短時間でできるので、便利です。しかし、天井効果というものがあり、軽度認知障害(MCI)の人は、かなり高得点をとるので、MCIの診断には不向きです。 そこで、MoCAというテストが考案されて…

アデュカヌマブの撤退について思うこと

2月1日に、バイオジェン社がアルツハイマー病の新薬アデュカヌマブの研究と販売を取りやめたということが日本でも報道されました。それで、第4相の臨床試験も途中で中止されることになり、今後アデュカヌマブが臨床で使われることはなくなったといえそうで…

認知症の告知の難しさについて

新患の患者さんが認知症と診断された時に、ご本人へどう説明するかということはいろいろ複雑な問題をはらんでいます。 この時にご本人にどういう説明をするのがよいのかについて、まだ専門家の間でも結論が出ていないように感じます。 あまりはっきりと告知…

地中海式食事法による認知症リスク低下について

食事、栄養は認知症予防にとってはとても重要なことはいうまでもありません。 私は日ごろ患者さんに 野菜をいろいろな種類、多くとること をお勧めしています。 野菜をとれば、食物線維や各種のビタミン、カロテノイドなどをとることができます。 さらに、野…

レカネマブの皮下注射についての新情報

日本でも9月に承認された早期アルツハイマー病の新薬レカネマブに関しては、点滴による注射が月2回必要になるということで、患者さんは病院にたびたび来て、点滴を受けなければなりません。また医療機関もいろいろな準備をしないといけないということになり…

多様な知的活動をすると認知症予防効果が高い

読書などの知的活動は認知症予防に役立つということはよく知られています。座って行ういろいろな知的活動について、認知症予防効果を調べた研究があるので、紹介してみます。これは国立長寿医療センターで行われたものです。 5300人の認知症ではない高齢者に…

認知症・軽度認知障害で嗅覚異常が起こる理由とは

認知症では、嗅覚が鈍くなることがよく知られています。また、認知症の前段階の軽度認知障害(MCI)でも、認知症ほど強くないが嗅覚に問題が起こることがかなりあるということです。 その理由はまだ十分わかっていません。一つの説としては、海馬及びその周…

ドナネマブは第2のアルツハイマー病新薬となるか

アルツハイマー病の新薬として、レカネマブが日本でも承認されることになりました。それに続いて、期待されているのがドナネマブです。以前に、このブログで少し説明したことがありますが(N末修飾アミロイドβに対する抗体ドナネマブによるアルツハイマー病…

キノコを多くとると認知症になりにくい

キノコには特徴的な栄養素が含まれていて、私も興味をもって調べてみています。キノコを食べることががんの予防に有効ということを、先日姉妹ブログの方に、書きましたキノコを食べればがん予防になる - 認知症予防の散歩道 (hatenadiary.com)。では、認知症…

アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の生存率には違いがある

レビー小体型認知症(DLB)は、アルツハイマー型認知症(AD)に次いで頻度が多い神経変性認知症として知られている。幻視症状や症状が変動しやすいことなどが特徴で、治療も難しい面がある。この二つの認知症の生存率に違いはあるのだろうか? この問題につ…

コーヒーを飲む量が多い人は脳にβアミロイドが溜まりにくい

最近、コーヒーに認知症予防効果があるらしいということがいろいろな研究からわかってきている。それに関連して、コーヒーを飲む量と脳内βアミロイド(Aβ)蓄積の関係を調べた研究があるので、要点を紹介してみたい。 一つは、韓国の研究、もう一つはオース…

MCIからアルツハイマー型認知症への進行には脳内タウの広がりが深く関与

最近、脳内の異常タウの広がりの程度をPET検査で調べることが可能となってきている。その技術を用いて、健常者、MCI(軽度認知障害)、及びアルツハイマー型認知症患者の脳内タウの広がり方を調べて、分類化するという大規模研究が行われた。非常に興味深い…

米国ではアデュカヌマブへのアクセスが大幅に制限されることに

この4月7日に米国保健・福祉省のCMS(メディケア・メディケイド・サービスセンター)が、アルツハイマー病治療薬アデュカヌマブに対するメディケア給付対象を大幅に制限するという最終決定を下したということだ。この決定について、日本では大きく報道されな…

アデュカヌマブ認可における疑惑が問題に

アデュカヌマブの承認審査の過程で、FDAのスタッフとバイオジェン社の間で、正式なものでない何等かのやりとりがあったのではないかという疑いについて、アメリカ合衆国保健福祉省が調査をすることになったということだ。 アデュカヌマブの承認過程は、通常…

アデュカヌマブの迅速承認にFDA諮問委員会メンバー3名が抗議の辞任、新聞に批判記事寄稿も

6月7日に米国FDAが、アルツハイマー病の治療薬としてアデュカヌマブを迅速承認するという決定がなされ、日本でも大々的に報道がなされた。この承認の経緯はかなり複雑なものだったのだが、詳しい事情はここでは省きたい。ただ、迅速承認という制度は、通常の…