アルツハイマーよもやま話ー研究者・医師のブログ

認知症研究者・医師のブログです。

認知症

認知機能テストMoCAの得点はMCI(軽度認知障害)と認知症でどう違う?

認知機能テストでもっともよく使われているのがMMSEというもので、短時間でできるので、便利です。しかし、天井効果というものがあり、軽度認知障害(MCI)の人は、かなり高得点をとるので、MCIの診断には不向きです。 そこで、MoCAというテストが考案されて…

アデュカヌマブの撤退について思うこと

2月1日に、バイオジェン社がアルツハイマー病の新薬アデュカヌマブの研究と販売を取りやめたということが日本でも報道されました。それで、第4相の臨床試験も途中で中止されることになり、今後アデュカヌマブが臨床で使われることはなくなったといえそうで…

認知症の告知の難しさについて

新患の患者さんが認知症と診断された時に、ご本人へどう説明するかということはいろいろ複雑な問題をはらんでいます。 この時にご本人にどういう説明をするのがよいのかについて、まだ専門家の間でも結論が出ていないように感じます。 あまりはっきりと告知…

地中海式食事法による認知症リスク低下について

食事、栄養は認知症予防にとってはとても重要なことはいうまでもありません。 私は日ごろ患者さんに 野菜をいろいろな種類、多くとること をお勧めしています。 野菜をとれば、食物線維や各種のビタミン、カロテノイドなどをとることができます。 さらに、野…

レカネマブの皮下注射についての新情報

日本でも9月に承認された早期アルツハイマー病の新薬レカネマブに関しては、点滴による注射が月2回必要になるということで、患者さんは病院にたびたび来て、点滴を受けなければなりません。また医療機関もいろいろな準備をしないといけないということになり…

多様な知的活動をすると認知症予防効果が高い

読書などの知的活動は認知症予防に役立つということはよく知られています。座って行ういろいろな知的活動について、認知症予防効果を調べた研究があるので、紹介してみます。これは国立長寿医療センターで行われたものです。 5300人の認知症ではない高齢者に…

認知症・軽度認知障害で嗅覚異常が起こる理由とは

認知症では、嗅覚が鈍くなることがよく知られています。また、認知症の前段階の軽度認知障害(MCI)でも、認知症ほど強くないが嗅覚に問題が起こることがかなりあるということです。 その理由はまだ十分わかっていません。一つの説としては、海馬及びその周…

ドナネマブは第2のアルツハイマー病新薬となるか

アルツハイマー病の新薬として、レカネマブが日本でも承認されることになりました。それに続いて、期待されているのがドナネマブです。以前に、このブログで少し説明したことがありますが(N末修飾アミロイドβに対する抗体ドナネマブによるアルツハイマー病…

キノコを多くとると認知症になりにくい

キノコには特徴的な栄養素が含まれていて、私も興味をもって調べてみています。キノコを食べることががんの予防に有効ということを、先日姉妹ブログの方に、書きましたキノコを食べればがん予防になる - 認知症予防の散歩道 (hatenadiary.com)。では、認知症…

アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の生存率には違いがある

レビー小体型認知症(DLB)は、アルツハイマー型認知症(AD)に次いで頻度が多い神経変性認知症として知られている。幻視症状や症状が変動しやすいことなどが特徴で、治療も難しい面がある。この二つの認知症の生存率に違いはあるのだろうか? この問題につ…

コーヒーを飲む量が多い人は脳にβアミロイドが溜まりにくい

最近、コーヒーに認知症予防効果があるらしいということがいろいろな研究からわかってきている。それに関連して、コーヒーを飲む量と脳内βアミロイド(Aβ)蓄積の関係を調べた研究があるので、要点を紹介してみたい。 一つは、韓国の研究、もう一つはオース…

MCIからアルツハイマー型認知症への進行には脳内タウの広がりが深く関与

最近、脳内の異常タウの広がりの程度をPET検査で調べることが可能となってきている。その技術を用いて、健常者、MCI(軽度認知障害)、及びアルツハイマー型認知症患者の脳内タウの広がり方を調べて、分類化するという大規模研究が行われた。非常に興味深い…

米国ではアデュカヌマブへのアクセスが大幅に制限されることに

この4月7日に米国保健・福祉省のCMS(メディケア・メディケイド・サービスセンター)が、アルツハイマー病治療薬アデュカヌマブに対するメディケア給付対象を大幅に制限するという最終決定を下したということだ。この決定について、日本では大きく報道されな…

アデュカヌマブ認可における疑惑が問題に

アデュカヌマブの承認審査の過程で、FDAのスタッフとバイオジェン社の間で、正式なものでない何等かのやりとりがあったのではないかという疑いについて、アメリカ合衆国保健福祉省が調査をすることになったということだ。 アデュカヌマブの承認過程は、通常…

アデュカヌマブの迅速承認にFDA諮問委員会メンバー3名が抗議の辞任、新聞に批判記事寄稿も

6月7日に米国FDAが、アルツハイマー病の治療薬としてアデュカヌマブを迅速承認するという決定がなされ、日本でも大々的に報道がなされた。この承認の経緯はかなり複雑なものだったのだが、詳しい事情はここでは省きたい。ただ、迅速承認という制度は、通常の…

カロテノイドは認知症リスクを下げる

βカロテンやルテインなどのカロテノイド摂取がアルツハイマー型認知症の患者さんでは少ないという報告がいくつかあります。私は、食事の中でも野菜が重要だということを強調したいと思います。特に、カロテノイドは抗酸化力が高いことから、アミロイドβオリ…

アミロイドβオリゴマー神経毒性低減療法の実用化に向け、新会社を設立

認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)の段階で、その病態進行を防ぐために、早期の治療介入が重要ということはわかってきたのだが、まだその方法として決定的なものはないのが現状です。特に、アルツハイマー病の前段階は、アルツハイマー病を背景とする…

N末修飾アミロイドβに対する抗体ドナネマブによるアルツハイマー病の治験について

早期のアルツハイマー病に対する新たな抗体療法の治験結果が最近報告された。これは、イーライリリー社が開発しているドナネマブ(donanemab)という抗体の第2相試験についてで、その作用機序は独特なもので、これまでに報告されているものに比べて、アミロイ…

アデュカヌマブの認可に赤信号

アルツハイマー認知症の新薬候補であるアデュカヌマブについて新たな動向が報道された。11月6日にアデュカヌマブの認可申請に対して、FDAの諮問委員会が否定的な勧告を出したということだ。この諮問委員会は外部の専門家からなるものらしく、アデュカヌマブ…

ヒト脳内におけるシナプス密度の減少とタウ蓄積の関連性

以前(今年2月11日)のブログで、脳内のシナプスを可視化できるPETのトレーサーについて、簡単な記事を書いたことがある。最近、このトレーサーを使った興味深い研究が報告されていた。この研究はベルギーのVan Laere博士らによって行われたもので、Neurolo…

タウ抗体療法の新情報

アルツハイマー病の脳に異常なタウたんぱく質が溜まることはよく知られている。特に最近、そのような異常なタウが、神経細胞間を伝播して、広がることが分かってきた。そのため、タウに対する抗体療法が開発され、臨床治験が行われている。このような治験と…

アミロイドβの蓄積とタウの広がりの関係

アルツハイマー型認知症におけるアミロイドβの蓄積量と異常化したタウタンパク質の広がりには、有意な関連があるということが、次第にわかってきている。最近のアルツフォーラムの記事にも、そのことが取り上げられていた。それによると、アミロイドPETとタ…

考察ーリコード法 その3

ブレデセン博士のリコード法論文3報をよくみて、考えたことを書いてみている。 MCIの症例が改善するということは、十分想定できることだと思う。MCI例の例数、年齢、男女比についてまとめてみると、はじめの2報で10例、3報目で35例、計45例である。65才以…

考察ーリコード法 その2

前回、リコード法の全体像について、おおまかに考察してみた。この療法の批判の一つとして、例数が少ないということがあったようだが、2018年の論文では、相当数の症例が提示されている。ただ、臨床試験という形で、効果を検証していないのが問題だという批…

考察ーリコード法 その1

アメリカのブレデセン博士(B博士)が開発したリコード法で、アルツハイマー型認知症の人の症状が改善したということが、最近注目されている。16日のNHKの特集番組でも現地取材をもとに、そのような治療法とその改善例についてかなりくわしく放映して…

アルツハイマーの人の脳内シナプスを可視化

アルツフォーラムというサイトで、PETで人の脳内のシナプスを可視化できたという記事がのっている。このリガンドは、UCB-Jという名前のもので、前シナプス小胞のタンパク質SV2Aに結合性があるという。アルツハイマーによるMCIとアルツハイマー認知症の人では…

メマンチンとアミロイドβ     

アルツハイマー型認知症の患者さんに、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンといったアセチルコリンエステラーゼ阻害薬1種類を使っていて、認知機能に低下傾向がでてきたときの対策として、メマンチン(メマリー)を併用するのは常套手段といえる。この…

おすすめのサプリメントは?

MCIあるいは正常の人が予防的にのむサプリメントとして何がおすすめだろうか?これはとても難しい問題だと思う。論文などで、しっかりした裏付けがあるものがやはりよいだろうと思われる。私の知る範囲での話になってしまうのだが、「メモリン」はMCIの人に…

アデュカヌマブの新展開  

アデュカヌマブの動向は気になるところだが、ニューロセントラルというサイトによると、オープンラベルのフェーズ3B試験が米国で4月からはじまるということだ。この治験には、中止された治験に参加していた人だけが参加できて、高用量の投与を4週ごとに…

ドネペジルの効果の個人差  

認知症の診療をしていて、アルツハイマー型と思われる人に、ドネペジル(アリセプト)を処方することは多い。しかし効果が感じられる人と全く感じられない人がいるというのが、実際ではなかろうか。効果がないということと維持できているということの見極め…