認知症では、嗅覚が鈍くなることがよく知られています。また、認知症の前段階の軽度認知障害(MCI)でも、認知症ほど強くないが嗅覚に問題が起こることがかなりあるということです。
その理由はまだ十分わかっていません。一つの説としては、海馬及びその周辺が嗅覚の伝達経路として重要だからということがあります。つまり、嗅覚神経は、嗅内皮質に投射して、海馬に連絡していることが知られています。一方、MCIの段階ですでに、嗅内皮質から海馬にタウが蓄積していることがわかっています。嗅覚異常がMCIの患者でも高頻度に認められるのは、そのような病理学的な変化を反映しているものと考えるのは、もっともな説なのではないでしょうか。
実際、臭いの同定の異常と嗅内皮質及び海馬における神経原線維変化の密度の間に相関があるという報告があり、上に述べた説の確からしさが示唆されます。
下記を参考にしました。
Wilsonら J Neurol Neurosurg Psychiatry 2007