アルツハイマーよもやま話ー研究者・医師のブログ

認知症研究者・医師のブログです。

コーヒーを飲む量が多い人は脳にβアミロイドが溜まりにくい

最近、コーヒーに認知症予防効果があるらしいということがいろいろな研究からわかってきている。それに関連して、コーヒーを飲む量と脳内βアミロイド(Aβ)蓄積の関係を調べた研究があるので、要点を紹介してみたい。

一つは、韓国の研究、もう一つはオーストラリアの研究である。

一つ目の研究では、411人の健常高齢者を、コーヒーを一日2杯未満しかのまない人(269人)と2杯以上飲む人(142人)にわけて、脳内のAβ量をアミロイドPETで調べている。さらに、FDG-PET、MRIも行って、大脳の糖代謝、大脳皮質の厚さ、大脳白質の高信号域についても検討した。その結果、コーヒーを2杯以上飲む人は、飲まない人に比べて、Aβ陽性の人の割合が有意に少ないことが判明した。しかし、両群間で、糖代謝量、大脳皮質の厚み、大脳白質の高信号域には有意差がなかった。

したがって、長期間コーヒーを摂ることにより、Aβ蓄積が抑制される可能性があるといえる。

オーストラリアの研究は縦断的な研究である。227人の健常高齢者を約10年間追跡して、コーヒー摂取量と認知機能低下の関連を調べている。また、一部の被験者(60名)ではアミロイドPETを実施している。

その結果、コーヒーの消費量が多いほどMCIや認知症へ移行する人が少なかったという。また、一部の人の結果であるが、コーヒーの消費量とAβ蓄積量には反比例の関係が見られた。

これら二つの研究から、観察の仕方は異なるが、ほぼ同じ結論が導かれている。コーヒーにはAβが脳に溜まることを防ぐ因子が含まれているのかもしれない。この点については今後の研究が必要と思われるのだが、コーヒーにアルツハイマー認知症の予防効果があるとすると、コーヒー好きの人にとっては朗報といえるだろう。

 

※下記の文献を参考にしました。

Kimら、Translational Psychiatry 2019; Gardenerら、Frontiers in Aging Neuroscience 2021