アルツハイマーよもやま話ー研究者・医師のブログ

認知症研究者・医師のブログです。

米国ではアデュカヌマブへのアクセスが大幅に制限されることに

この4月7日に米国保健・福祉省のCMS(メディケア・メディケイド・サービスセンター)が、アルツハイマー病治療薬アデュカヌマブに対するメディケア給付対象を大幅に制限するという最終決定を下したということだ。この決定について、日本では大きく報道されなかったが、この決定は、他の治療薬の開発にも大きな影響を及ぼしそうだ。

この決定がでたことで、米国でアデュカヌマブによる治療を受けられるのは、NIH(米国国立衛生研究所)によるランダム化比較試験に登録する場合に限られることになった。わかりやすく言うと、アデュカヌマブが一般に使用されるようになるためには、このフェーズ4の臨床試験の結果、臨床的な有効性がはっきり確認されることが必要条件となっている。つまり、アデュカヌマブはそれまでは、ほぼ不認可状態がつづくことになり、かなり厳しい決定といえる。

この決定の背景には、FDA(米国食品医薬品局)によるアデュカヌマブの迅速承認に対する不信感が、米国の医学界の中にあることが反映されているようだ。

また、今回のCMSの決定では、今後同様のアルツハイマー病治療薬についても言及している。要するに、臨床的な有効性が臨床試験ではっきり確認されて、従来型の正式な過程を経て承認された場合は、CMSの認可した前向き研究をメディケアの給付対象として認めるというものである。つまり、同タイプの治療薬については、迅速承認でなく、正式承認を条件にしている。そういう意味で、アルツハイマー病治療薬の承認のハードルは、これまでよりも高くなったわけだが、やはりそれなりに合理性のある決定といえるような気がする。

 

下記のニュース記事を参考にしました。

バイオジェンのアルツハイマー薬、メディケアが給付対象大幅制限 - Bloomberg