アルツハイマーよもやま話ー研究者・医師のブログ

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査読偽装の問題についての感想

福井大学の女性教授(T教授)が、自分の論文の査読について、知り合いの査読者と結託して有利な査読コメントを作成し、それを査読者に提供して、論文の査読・審査を操作していたということが明るみに出て、新聞に報道されていた。昨年の6月ころにこの問題を毎日新聞がスクープし、かなり話題になっていたが、その調査が福井大学で行われて、調査報告が12月20日ころに出されたので、また新聞で報道されたようだ。

その報告によれば、合計6本の論文でそのような査読操作が行われていて、協力した査読者が千葉大のH教授のほかにも2名いたという。なかでもH教授は6本のうちの5本に関与していたので、かなりこの問題に深く関わっていたことになる。

2本の論文についてはすでに出版社側が問題を重くみて撤回措置をとっている。残りの4本について大学は取り下げを勧告したという。

それにしても、福井大学の報告書を読んでみると、T教授の非倫理的行為に対してかなり寛容なものになっている気がする。特に、報告書の中で、「査読操作に関してT教授からの働きかけや計画性は認められず、また、研究データの改ざん等が行われたわけでもなく、研究成果を歪めるものではなかった。」という箇所は身内に甘い判断になっているのではないだろうか。T教授は、単にH教授らから依頼されて、査読コメントを作成して、送付しただけ という見解になっているのだが、それは身内の問題点をあえて詮索したくないという態度に思える。

今回の問題では、T教授の研究倫理感が欠如しているということが一番の問題であったのだろうと思うが、査読コメントをT教授に求めて、自分自身で査読を行わなかったH教授らもやはり倫理的責任が問われるのは当然だろう。

 

*下記を参考にしました。

福井大学における研究活動の不正行為疑いに係る調査結果について | 福井大学 (u-fukui.ac.jp)

学術誌に投稿された論文の“査読”で千葉大教授が不適切行為|NHK 千葉県のニュース