アルツハイマーよもやま話ー研究者・医師のブログ

認知症研究者・医師のブログです。

アデュカヌマブの認可に赤信号

アルツハイマー認知症の新薬候補であるアデュカヌマブについて新たな動向が報道された。11月6日にアデュカヌマブの認可申請に対して、FDAの諮問委員会が否定的な勧告を出したということだ。この諮問委員会は外部の専門家からなるものらしく、アデュカヌマブの治験結果から、アルツハイマー認知症に対して有効であるといえるのかが議論されたようだ。

以前このブログ(2019年12月)でも触れたことがあるが、フェーズ3の治験が、EMERGE試験とENGAGE試験の2種類あり、前者の高容量のデータのみから有効性があるとする見解が導かれて、認可申請がなされていた。今回の諮問委員会では、EMERGE試験の結果が有効性の根拠となるかに対して、yesは1、noは8、不明確が2であったという。さらに、2つのフェーズ3試験、フェーズ1試験、アルツハイマー病の病態生理に対する薬理動態的な効果のデータを総合して、有効といえるかという問いに対して、yes0、 no10、不明確1という結果だった。

結局、諮問委員会は、アデュカヌマブの有効性に関する根拠は薄弱であるという結論を出したことになる。この勧告は、FDAの判定に対して拘束力を持たないということなのだが、yesが0でnoが10という大差なので、認可には赤信号が灯ったといえそうだ。

(本稿では、

Update on FDA Advisory Committee’s Meeting on Aducanumab in Alzheimer’s Disease

を参考にしました。)f:id:ninchinosekai:20201108185901j:plain