アルツハイマーよもやま話ー研究者・医師のブログ

認知症研究者・医師のブログです。

考察ーリコード法 その1

アメリカのブレデセン博士(B博士)が開発したリコード法で、アルツハイマー認知症の人の症状が改善したということが、最近注目されている。16日のNHKの特集番組でも現地取材をもとに、そのような治療法とその改善例についてかなりくわしく放映していた。リコード法というのは、Reversal of Cognitive Declineの文字から ReCoDeという名前を付けているそうだ。この方法で、MCI軽度認知障害だけでなく、軽症の認知症の人も改善する例があるという。この方法の特徴は、個別化医療の手法で、患者の種々の代謝物、ホルモン、ビタミン、金属、炎症物質、毒素物質などを測定して、オーダーメイドの対応策を策定するというところだろう。特に糖代謝、ホモシステインなどが強調されているようだ。治療法の中では運動、食事、睡眠、サプリメントなどが重要視されていて、これらを総合的に実行して、体内物質が正常化するかを再検査するという。

認知症とはっきり診断されて仕事をやめていた人が、この治療をはじめてから仕事に戻れたというケースがかなりあることには驚かされる。私は、B博士のリコード法の論文3報を見直してみた。2014年、2016年の二つの論文で、MCIではなくアルツハイマー認知症とはっきりしていたのは、5例と少ない。しかし、2018年の論文では100例中なんと59例がアルツハイマー認知症なのである。診断の確度には少し問題はあるかもしれないのだが。

そして、この合計症例のうち、65才以下が24例、66才以上は40例である。男女比は3:2でやや男性が多い。65才以下の若年発症例が多いのは、この報告の特徴かもしれない。一般的に若年例の方が治療が難しいような印象があるのだが、なぜ若年例でも改善するのか、この辺は今後解き明かされるべきところだと思う。