アルツハイマーよもやま話ー研究者・医師のブログ

認知症研究者・医師のブログです。

新型コロナ後遺症に認知症薬が有効かもしれない

最近、新型コロナ後遺症のマウスモデルを作製したという興味深い研究が報告されて、毎日新聞でも報道されていました。これは、慈恵医大のウイルス学講座で行われたもので、概要は慈恵医大のホームページに載っています。

この研究では、新型コロナウイルスのスパイクタンパクを発現するアデノウイルスベクターを、マウスの鼻腔内に投与したところ、倦怠感やうつ症状を呈したということです。そして、脳内では、嗅球細胞の細胞死が増加したり、炎症反応(IL-6産生)が亢進したりしていました。さらに、興味深いことに、脳内アセチルコリン産生細胞の減少もみられたので、アセチルコリンを増加させる作用を持つ認知症薬ドネペジルを1週間与えたところ、倦怠感やうつ症状の改善がみられたそうです。

このことから、新型コロナの後遺症の治療に、ドネペジルが有効かもしれないという仮説のもと、臨床治験がはじまっているということです。

この仮説はなかなか魅力的なものではないかと思いました。新型コロナの後遺症で苦しんでいる人はかなり多いと言われていますので、治験で有効性が確認されるかどうか今後の動向が大いに注目されます。

 

次のサイトを参考にしました。

新型コロナウイルス・スパイクタンパク質の病原性を解明―新型コロナ後遺症および次世代ワクチン開発に重要知見― (jikei.ac.jp)

コロナウイルス、鼻に入り脳内で炎症 マウスで確認 慈恵医大 | 毎日新聞 (mainichi.jp)